分散分析におけるHADの特徴

 分散分析をする上でのHADの特徴を簡単に書いておきます。

 HADでは、5要因までの分散分析ができます。 要因計画は、内・間を混合できます。 また、単純主効果や単純交互作用も検定できます。

 HADで分散分析をする上での長所短所を書いておきます。

長所

  • 単純主効果・単純交互作用をプールされた誤差項・水準別誤差項どちらでも検定可能
  • 参加者内・間どちらでも多重比較を実行可能 ・球面性の検定と自由度補正を行う
  • アンバランスドデータにも対応(タイプⅢ平方和とタイプⅡ平方和を選べる)
  • 共変量を投入した共分散分析ができる(共変量の中心化もできる)
  • 出力が見やすい(と清水は思っている)
  • グラフを表示(エラーバーも自動表示)

短所

  • 5要因までしか分析できない
  • 多重比較の方法が限られる(Shaffer法、Holm法、Bonferroni法)
  • 多重比較は10水準までの要因しか実行しない(分散分析自体は行う)
  • 計算が遅い(データサイズが大きい場合、1~2分かかる)

分散分析用プログラムの特徴

 井関先生(ANOVA君の作者)のページにある分散分析プログラムの特徴の表+αに、HADの特徴をくっつけただけです。 ※ついでに、HADで分散分析のプログラムを作るにあたっても、井関先生のページはかなり参考にさせていただきました。ありがとうございました。

HAD ANOVA君 ANOVA4
分析可能な要因数 5要因 26要因 4要因
動作環境と計算速度 Microsoft Excel(遅い) Rの関数(遅い) Web(速い)
平方和の計算法 タイプⅡ,タイプⅢ タイプⅡ,タイプⅢ タイプⅠ+非加重平均法
単純主効果の検定における誤差項 プールした誤差項・水準別誤差項 水準別誤差項 プールした誤差項
単純交互作用の検定 あり なし あり
多重比較の方法 修正Bonferroniの方法 修正Bonferroniの方法 Ryan法
参加者内要因の多重比較における誤差項 要因の誤差項・ペアごとの誤差項 ペアごとの誤差項 要因の誤差項
球面性検定とεによる調整 あり(多標本球面性なし) あり(多標本球面性あり) なし
共分散分析 あり なし なし

※計算速度は、あくまで清水の主観です。
※平方和の計算法とは、アンバランスドデータの場合に生じる要因間の相関をどう対処するかの方法の違いです。
※単純主効果の誤差項には、ある水準だけの誤差項(水準別誤差項)を使うか、元の分散分析の誤差項(プールされた誤差項)を使うか、という2種類があります。
※修正Bonferroni法や球面性の検定については、広島大学の入戸野先生の論文にわかりやすく実践的な情報が載ってあります。また、ANOVA君のページも詳しいです。

 こんな感じで、HADは選択肢が多い分、計算が遅かったりします。好みや分析環境に合わせて最適なものを選んでもらえたらいいかなと思います。

SPSSに関しては、「続き」をどうぞ。 表には載せてなかったですが、SPSSの一般線形モデルプロシージャの特徴も書いておきます。参考までに。

平方和のタイプ: タイプⅠからタイプⅣまで選べる。

単純主効果の誤差項:

 シンタックスの書き方にもよるが、一般的に使われていると思われるCOMPARE文では、SPSSはやや特殊な方法を用いている。まず、スライスする要因が参加者間要因である場合、プールされた誤差項を、スライス要因が参加者内要因である場合、水準別誤差項を用いてる。また、検定には基本的にMANOVA(多変量検定)を使っている。つまり、自由度が常に参加者間効果の誤差項になるようになっている。これは、基本的に球面性を仮定しないMANOVAを採用するというスタンスからそうなっていると思われる。 現時点で、清水はSPSSで単純効果の検定で分散分析を用いた検定を実行する方法を知らないです。

参加者内要因の多重比較の誤差項:

 SPSSではMANOVAを採用する以上、ペアごとの誤差項が基本になる。 単純交互作用の検定:SPSSでは普通の方法では見れない。清水は現時点でシンタックスでそれを実行する方法を知らないです。知ってる人いたら教えてください。

多重比較の方法:

 SPSSでは、参加者間要因の多重比較については豊富に方法を持っていますが、参加者内要因になると途端にしょぼいです。これにはちゃんと理由があって、HSDをはじめとするスチューデント化された範囲を用いる多重比較法は、参加者内要因では使えないんです。なので、HSDはもちろん、TukeyのB法とか、REGWQ法なんかも使えません。

 SPSSでは参加者内要因(というかペアごとの比較)としてシダック法とボンフェローニ法を用意していますが、シダック法もどうやら参加者内要因では使えないっぽいです。とすると参加者内要因で使える方法はボンフェローニ法だけになります。HADやANOVA君が修正ボンフェローニ法を、ANOVA4がRyan法を採用しているのも、間内一貫して使えるのがこれらの方法だけだからです。

 ついでにHADはShaffer法(主効果が有意な場合に検出力が上がるShaffer法の別解を含む)、Holm法、Bonferroni法が利用できます。Shaffer法については上に挙げた入戸野先生の論文が参考になります。

球面性の検定とε(イプシロン):

 SPSSは基本は多変量検定ですが、ちゃんと球面性の検定を用意しています。しかし、Mauchly検定だけで、多標本球面性検定は実行しません。

 多標本球面性仮定とは、参加者間要因と参加者内要因が含まれる混合計画において、参加者間要因の各水準ですべて球面性がなりたち、かつ各水準の誤差共分散が等質であるという仮定です。これの仮定を満たしていることが混合計画における分散分析の正確さを保証する必要十分条件となるわけです。

 SPSSでは混合計画でもすべての参加者間要因の水準をプールした誤差共分散行列に基づいて球面性検定を行います(HADも同じです)。ANOVA君は、多標本球面性検定に対応しています。

共分散分析:

 SPSSは共変量にも対応しています。

 こんな感じでしょうか。いろんなプログラムによって、採用している方法が違いますが、それぞれの背景に分析の哲学みたいなのがあって、面白いです。

 HADの分散分析のコンセプトは、以下のような感じです。

  1. 分散分析のすべての仮定が成立している(誤差の等分散・球面性・正規性)状態をデフォルトに。  つまり、デフォルトではプールされた誤差項、球面性の補正なしになっています。これは、最も検出力が高い方法を採用しているということでもあります。変えられますけど。
    ※ver10以降は,デフォルトでは球面性の補正をH-Fにしています。これは,球面性の検定に詳しくない人でも,誤った検定をしないようにするための対処です。
  2. 主効果と多重比較ができるだけ同じロジックで検定できることを念頭に。  つまり、多重比較の検定には要因の誤差項を使い、要因の主効果が有意だった場合に検出力を上げられるShaffer法(HADでは修正Shaffer法)をデフォルトにしています。これは、心理学において主効果→多重比較という流れが主流だからです。しかし、これには検定の多重性の問題があるかもしれません。現時点ではわかりません。
    ※ver10以降は,デフォルトをSaffer法に変えました。修正Saffer法はあまり使われていない方法で,論文に書きにくいことも理由です。
  3. いろんな立場の人がとりあえず使えるように。  とはいいつつ、HADでは、いろんな方法をオプションとして選べるようにしています。

以上です。

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