Mplusで構造方程式モデリング

さて、久々に統計学の記事ですね。

行動計量学会春セミナーで得た情報を参考に書いています。 Mplusというのは、統計学者のMuthen夫妻が作ったソフトウェアです。ベースとアドオンに分かれてます。

ベース:

探索・検証的因子分析、パス解析、ランダム係数モデル、多母集団分析、潜在曲線モデル、非線形回帰分析(プロビット分析とロジスティック分析、ポワソン回帰など)、打ち切りデータ分析、平均構造分析。 推定法として、最尤法、重み付き最小二乗法、ベイズ、各種ロバスト標準誤差の推定

アドオン:

MIXTURE 潜在構造分析(潜在クラス分析) MULTILEVEL 2段抽出モデル(マルチレベルモデル) ベースがあれば、Amosでできることはほぼ全部できます。

 学生であれば、アドオンを全部含めて4万ちょっとで購入ができます。さぁ、学生のうちにMplusを手に入れよう! さて、Mplusの長所、短所をあげます。

長所

・Amosでできない分析がさくっとできる カテゴリカルデータを最小二乗法で分析ができる(ただし、カテゴリカルを指定できるのは従属変数だけである) ランダム係数モデル、潜在構造分析、2段抽出モデル、項目反応モデル、そしてそれらの複合的な分析

・プログラム文が短くて、簡単に実行できる 項目が40個もある因子分析をしたいとき、Amosはめちゃくちゃしんどいけど、Mplusなら F1 by A1-A40; の1文で終わる。 プログラムも、ボタンを押していけば勝手に記述されるので基本的なことを覚えれば、誰でもできる

・共分散とか誤差の設定を自動的にしてくれる これは、長所でもあり、短所でもあるかも。でもAmosは誤差の設定がうっとおしいし、すぐに分析ができるという意味で、個人的には長所だ。

・安い 学生なら4万で全部そろう。研究者でも8万4000円ぐらい。Amosより圧倒的に安い。

・軽い 動作が軽い。

欠点

・英語しかない マニュアル、サポート、ソフトウェア、すべてが英語。慣れればそれほど苦でもないけど、初心者にはちょっと大変かも。なんといっても、サポートしてくれるのがMuthenだしなぁ。

・GUIじゃない グラフィカルに分析ができないので、SEM初心者は大変かもしれない。モデルを組むのがなれないと難しいかな。でも、個人的にはCUIのほうが楽なんだよな・・・。SASが使える人なら、Mplusは簡単。 ※ただしMplus7から、GUIも搭載された!

使うという意味では、Mplusの短所は人にとっては敷居が高く感じるかも。でも、分析という意味では、Mplusじゃないとできないという意味で、長所が輝いてくる。

他のMplusの記事もどうぞ。

Mplusの基本的な使い方

Mplusでベイズ推定

行動計量学会での質問でわかったことは、下の続きを見てください。内容はマニアックです。

 

質問してきたことでわかったこと。

※ついでに、Mplusはデモ版でやってます。デモ版は組み込める変数の数に制限はあるけど全部の分析ができるので、一回さわって見てください。

Amos7とMplusのカテゴリカル分析は一致するのか?

 →Amos7はベイズ推定、Mplusはテトラコリック相関行列→最小二乗法で、アルゴリズムが全然違う。なので、厳密に一致しない。Mplusの方法はやや強引な方法である。あと、Mplusはカテゴリカルデータは従属変数に限られる。それは、分布の仮定の問題でそうなるらしい。Amos7は独立変数であっても大丈夫だと思う。 ※Mplus6以降ではMCMCによるベイズ推定が可能になった。

MplusとParscaleでは、どっちがIRTに使えるか?

 →心理尺度の場合、部分採点モデルより、段階反応モデルのほうが合いそう。それにパースケールは出力がちょっとひねってるらしい(笑)。という意味で、心理尺度の場合はMplusでいいのかもしれない、とのこと。 実質的な違いは、Mplusとパースケールはそんなにない。 Mplusでも潜在構造分析(潜在的な母集団を見つける分析)や多母集団分析ができるので、パースケールと比べて実は遜色が無い。
※Mplus6から、通常の項目反応理論が可能になった。

MplusとHLM6では、マルチレベル分析はどっちが使えるか?

 →これは明確な答えが聞けなかったが、僕が使ってみた感想と、いろんな人に聞いた情報をあわせて書いてみる。詳しいことは、別の記事で書きます。

 HLMについては、HLM6(あるいはSASのMixed)とMplusは結果がほぼ一致する。ただ、完全に一致ではない。推定方法が違うからなんとも。まぁ、実質問題が無い程度。 HLM6とMixedはアルゴリズムがすでにランダム係数を分析するようになっているので、標準化係数がでない。というか、出せない。でもMplusはランダム係数に関心が無いときは、2段抽出として分析ができるので、標準化係数や適合度指標を参照できる。つまり、関心にあわせた分析ができて、それにあわせて知りたいことを多く知ることができるのがMplusだ。

 あと、Mplusはなんとセンタリングの機能もついている。 あと、Mplusでは、HLM6ではできないことができる。

  1. カテゴリカルデータを導入できる HLM6でも可能になった これは大きい。従属変数が質的データでもHLMに組み込むことができる。
  2. 自由なモデリングが可能 これも大きい。つまり、潜在因子を従属変数にしたり、独立変数にしたりすることもできる。また、画期的なのがランダム係数を独立変数にすることもできる!これは、文章では表現できないぐらいすごいことである(興奮気味)。例えば、「変数Aへの変数Bのパスが大きいほど、変数Cが大きくなる」という仮説を検証できる。このような検証は今のところMplusでしかできない。
  3. 集団レベルの変数を個人の変数から推定できる これもすごい。HLM6は、レベル2の変数は集団メンバーに共通して得られる変数か、集団メンバーの得点を平均したものしか導入できなかった。それに対してMplusのマルチレベル分析は、個人のデータから集団のデータを平均することなく推定してモデルに組み込むことができる。

というわけで、今回のセミナーはさまざまな成果があったわけです。これでグルダイのワークショップも楽しくなりそうです。

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