社会心理学のための統計学

 

 

だいぶお待たせしてしまいましたが、「社会心理学のための統計学」を執筆しました!

誠信書房さんの「心理学のための統計学」シリーズの3巻となります。

 

本書の特徴

本書では、心理調査・社会調査で得たデータを分析するときに使える多変量解析の手法について解説しています。具体的には、因子分析、重回帰分析、共分散分析、調整分析、媒介分析について解説されています。

ただ、タイトルにもあるように「社会心理学のための」という点も重視しています。たとえば自尊心、対人認知、成人の愛着スタイル、関係へのコミットメント、社会的アイデンティティ、リーダーシップ、一般的信頼など、社会心理学を学ぶ上で知っておいてほしい構成概念についても理解できるように執筆しました。詳しくは下の目次をご覧ください。

こういった構成なので、社会心理学のゼミや、調査実習、多変量解析など、3年生ぐらいの学部生の授業で教科書としてつかってもらうことを想定しています。データや変数は社会心理学的ですが、もちろん周辺の心理学領域の学生にも使ってもらえると思います。

また、本書は特定の統計ソフトによる使い方については解説していません。しかし、本書で取り上げた統計手法を勉強する場合、著者である私が開発したHADを使うのがオススメです。HADは因子分析や重回帰分析はもちろん、調整分析、媒介分析なども簡単に実行できます。本書を教科書にとりいれてくださる方は、ぜひHADもセットでご利用いただけると授業が効率的になると思います。

各章に登場するダミーのデータセットはすべてこちらの「社会心理学のための統計学」というフォルダからダウンロードできます。これらを活用していただくと、教科書と同じ分析結果を学生と共有することができます。また、上記のHADも同じところからダウンロードできます。

HADやその他のソフトウェアを用いた分析方法などの資料は、本書の併設サイトにこれから順次アップロードしていく予定です。現在工事中です。しばらくお待ちください。

 

目次

第1章 心についての構成概念の測定――態度測定法
 1.1 構成概念と態度  
 1.2 態度の測定 
 1.3 態度構成法  
 1.4 態度を測定する――自尊心を例に  
 1.5 データの性質を知る
 1.6 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第2章 対人認知の構造を明らかにする――因子分析
 2.1 他者への印象形成と対人認知次元  
 2.2 因子分析
 2.3 因子の推定  
 2.4 因子が複数ある場合の因子分析  
 2.5 因子数の決定方法  
 2.6 因子分析を行ううえでの注意点  
 2.7 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第3章 他者への期待や信念の類型化――尺度の信頼性と妥当性
 3.1 他者一般に対する信念
 3.2 測定した構成概念の得点化  
 3.3 尺度を評価する1――信頼性  
 3.4 尺度を評価する2――妥当性
 3.5 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第4章 似ている人は好き?――単回帰分析
 4.1 人を好きになること――対人魅力
 4.2 回帰分析で類似性魅力仮説を検証する  
 4.3 予測力を評価する  
 4.4 回帰分析を実行するための前提  
 4.5 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第5章 一緒にいたい気持ちを予測する――重回帰分析
 5.1 コミットメントを予測する投資モデル  
 5.2 重回帰分析で予測する  
 5.3 説明変数の影響力を比較する  
 5.4 多重共線性の問題とその解決 
 5.5 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第6章 集団への所属意識を予測するものは?――準実験と共分散分析
 6.1 社会的アイデンティティ理論  
 6.2 実験と準実験  
 6.3 共分散分析  
 6.4 共分散分析と重回帰分析の関係
 6.5 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第7章 リーダーシップ・スタイルの相乗効果――階層的重回帰分析と調整分析
 7.1 リーダーシップ理論 
 7.2 階層的重回帰分析
 7.3 重回帰分析の交互作用効果(調整効果)の検討  
 7.4 単純効果分析
 7.5 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

第8章 心の文化差を説明する――媒介効果の分析
 8.1 文化による心の違い 
 8.2 媒介分析  
 8.3 間接効果の検定  
 8.4 媒介分析の実践 
 8.5 本章で取り上げた心理学をもっと勉強するために
 Quiz

 

本書の前書き(一部抜粋)

◇本書の説明

 本書は、因子分析や重回帰分析など、心理調査・社会調査でよく用いられる多変量解析の手法について解説しています。また、態度測定や尺度の得点化、信頼性や妥当性といった心理測定法に関わるトピックも盛り込んでいます。さらに、あまり日本語の解説書がまだ十分ではない、重回帰分析での交互作用効果の検討方法(7章)や、媒介分析の方法(8章)など応用的な回帰分析の手法についても取り上げています。

 本書の特徴は、本書のタイトルでもある「社会心理学のための統計学」を忠実に実現したところにあります。それは、各章では社会心理学の理論や研究を紹介し、実際に社会心理学の雑誌で掲載されている論文に似せたストーリーに基づいて、分析法が解説されている点です。1章では社会的態度や自尊心、2章では対人認知、3章では成人の愛着スタイル、4章では対人魅力、5章では関係へのコミットメント、6章では社会的アイデンティティ、7章ではリーダーシップ、8章では一般的信頼の文化差を取り上げました。これらの理論や構成概念は、著者(清水)が考える、「社会心理学を学ぶ学生が、卒業するまでに学んでほしいもの」を盛り込めるようにしています。

 そういった特徴から、本書は社会心理学の学部生向けのゼミや、社会調査実習などの授業で使われることを想定しています。重回帰分析よりも一般に難しいと思われている因子分析を先に持ってきているのは、実際の演習では尺度作成を行ってから重回帰分析をする、という流れのほうが多いと思うからです。

 ただ、だからといって、社会心理学を学んでいる学生にしか本書が利用できないわけではありません。社会心理学の理論などの事前知識がない学生でも十分に理解できるように執筆したつもりです。また、統計手法については他の心理学分野でも多く利用されるものが扱われています。社会心理学の近隣領域である、教育心理学や臨床心理学、発達心理学を勉強している学生たちもぜひ本書をとおして心理学と統計学のコラボレーションの成果を味わってもらえればと思います。

 本シリーズは一貫して、特定の統計ソフトウェアに依拠しない立場で書かれていますので、本書も読者の皆さんに適した環境で分析をする教材として使っていただけます。一方で、本書でとりあげている分析法を使うのにオススメのソフトウェアもあります。1つはフリーソフトであるRです。Rは非常に幅広い分析手法を網羅し、また最新の方法もどんどん取り入れられています。7章や8章の応用的な分析もRでなら簡単に実行できます。もう一つは著者(清水)が作成したHADというソフトウェアです。HADはExcelで動くフリーソフトで、著者の勤務校である関西学院大学や、その他の大学でも既に教育用に使われています。本書で紹介されている分析法もすべて実行できますので、学生指導に活用していただけると幸いです。HADはhttp://norimune.net/hadからダウンロードできます。