日本心理学会第81回大会で、「心理学におけるベイズ統計モデリングの可能性」というシンポジウムを行います。
※資料はシンポジウム直前にアップします
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企画代表者 清水裕士 関西学院大学
企画者 紀ノ定保礼 静岡理工科大学
話題提供者 難波修史 広島大学
話題提供者 坂本次郎 専修大学
話題提供者 杣取恵太 専修大学
指定討論者 荘島宏二郎 大学入試センター
企画趣旨
近年、心理学においてこれまで使われてきた伝統的な統計手法の限界点が指摘され、実験計画法と帰無仮説検定によって構築された「効果の有無を明らかにする分析」に縛られない新しい方法論が求められ始めている。その中でも、データ生成メカニズムの解明に主眼を置いた統計モデリングは社会科学全体で注目が集まってきている。また、統計モデリングはベイズ推定のアルゴリズムの改良に伴って、「ベイズ統計モデリング」として有力視されている。
本シンポジウムでは、これまでならば「有意・非有意」「効果あり・なし」のみで検討されていただろう実験心理・臨床心理的データに対して、ベイズ統計モデリングを活用した3つの分析例を紹介する。その後、心理統計学の専門家からの指定討論を通して、これまでの手法との比較からその有効性について議論したい。
難波修史(広島大学大学院教育学研究科)
説明変数の多い重回帰分析において,どの説明変数を選択するべきかという問題は悩ましい。ベイズ統計モデリングでは,モデルの説明変数を選択するための回帰係数に関する事前情報を自由に設定できるため,そうした問題を解決可能となる。本稿では,複数の感情体験が特定表情部位の生起を予測するモデルを,従来の手法とベイズ統計モデリングを比較しながら検討することで,心理学領域への適用可能性について議論する。
坂本次郎(専修大学大学院文学研究科 日本学術振興会DC2)
活動計測を用いた心理学研究が増加している。群間差に焦点化したものが多い。しかし、平均値差を扱う統計手法では、時系列情報に潜在する多くの知見が失われる。本発表では、活動データに対するベイズ統計モデリングの実践例を報告する。ベータ分布やゼロ切断ガンマ分布の時系列モデルを構成し、睡眠—覚醒や状態変動性などの解釈可能な個人差パラメータを推定した。活動量のベイズモデリングで、心理学のさらなる可能性を拓く。
杣取恵太(専修大学大学院文学研究科 日本学術振興会DC2)
本発表では、ベイズ的アプローチを用いた認知モデリングの実践例や、階層モデルを用いた個人差のモデリングを扱う。心理学が対象とする多くの事柄は、実際には観測できない、潜在的な概念である。そのため、潜在的な変数と、観測される行動データの関係について、仮説を立て、モデリングを行う必要がある。ベイズ統計モデリングは、このような複雑な人の心を紐解くための手法として、非常に優れている。