HAD11.30をアップしました。
今回のバージョンアップで追加された機能は以下の通りです。
- 構造方程式モデル(SEM)で欠損値の推定(完全情報最尤法)ができるようになった。
- SEMで頑健標準誤差の推定ができるようになった。
- SEMで確認的因子分析以外でも因子得点の推定ができるようになった。
- カテゴリカル因子分析がMacでも利用可能になった。
まず,1.のSEMにおける欠損値推定ができるようになったのが,今回の目玉です。すべてのデータが欠損でない限り,残りのデータすべてを使ってモデルを推定できるようになりました。完全情報最尤法による欠損値推定は,リストワイズ削除を行うよりもよりよい推定ができることがわかっています。なので,欠損値がある場合は常にこの方法を使うといいでしょう。ただ,推定に時間がかかる点には注意が必要です。
次に,2の頑健標準誤差の推定ができるようになりました。頑健標準誤差についてはこちらの記事で書いているので,参考にしてみてください。簡単に書いておくと,最尤法が仮定する,データの多変量正規性の仮定が満たされなくても,頑健な標準誤差を推定できるようにしたものです。この機能が増えたことで,回帰分析を実行するなら,欠損値の推定もできるのでSEMで分析するほうがより便利になったといえます。
3の因子得点については,これまで確認的因子分析でしか推定できなかったのをSEM全般に拡張したものです。完全情報最尤法にも対応しているので,欠損値がある場合でも因子得点の推定を行うことができます。
最後に,4は,これまでMacではカテゴリカル因子分析が実行できませんでしたが,それが実行出るようになりました。Macの場合はソルバーを使わずに推定しているので若干遅いですが,できないよりはできるほうがいいだろうと思い,追加しました。
まだMacにはSEMは対応していません。どうもMacだとソルバーを背後で実行させることができなようです。もし解決法が見つかればMacにも対応したいと思います。
今回のバージョンアップによる変更点は以上です。