HAD11.00をアップしました。

HAD11をアップしました。HADについては,こちらの記事を参照してください。

今回のバージョンアップでは,以下のような2つの機能が追加されました。

1.構造方程式モデリングができるようになった
2.あとで代入する変数を変更できる@変数の機能が追加された

1.については,すでにTwitterでも予告していたように,構造方程式モデリング(以下,SEM)を実行できるようになりました。詳しい分析方法は後日の記事でアップしますが,今回の記事でも簡単に解説しておきます。
※ただし,Mac版ではまだSEMは実装していません。できるかどうかもまだわかっていません。しばらくお待ちください。

また,HAD11を起動した場合,以下のようなコンパイルエラーが出る場合があります。

error1

これは,ソルバーアドインの読み込みに失敗した場合に表示されます。このエラーが表示された場合は,一度HADを終了し,Excelの「ファイル」(2007の場合はOfficeボタン)から,「オプション」を開き,その中にある「アドイン」を選びます。すると,下のほうに「設定」というボタンがあるので,それを押して,「ソルバーアドイン」をチェックしてください。この手順の後,HADを起動するとエラーは出なくなると思います。

なお,以前のバージョンである,HAD10.42も残してありますので,どうしても動かない場合はこちらのバージョンを使ってください。

2.については,これまでのHADでは,同じモデルだけど変数が違う分析をたくさんしたい場合,モデルの指定をいちいちやり直さな変えればダメでした。今回導入した@変数(アットマーク変数)を使えば,かなり簡単になります。例としては,以下のような感じです。

atmark1

上の図にある,[@1]という変数は,中身が空っぽの変数です。図の一番下を見れば,[@1]にv5という変数が指定されているのがわかると思います。これは,[@1]にv5が代入されていることを意味しています。なので,上の回帰分析では,代入する変数をv5からv6に変えるだけで,v6を目的変数とした回帰分析をすぐに実行できます。

この機能は今から説明する構造方程式モデリングでも使えますので,モデルをいちいち書き直さなくていい,というわけです。

HAD11による構造方程式モデリング

ではいまから,HADによるSEMについて簡単に説明します。

◆モデリング

基本的なモデリングの方法は,小島先生の「Excelで学ぶ共分散構造分析とグラフィカルモデリング」を参考にしました。

以下の画像のように,パスを推定する場合には「p:」を,共分散には「c:」を,分散には「v:」を入力します。上にある「パスを推定」ボタンを使えば簡単にできます。下のモデルは,満足度に対して,発話後期と集団成績からパスが引かれていて,さらに発話後期と集団成績に共分散が仮定されている,というモデルです。

sem1

ただ,慣れないと上のモデル式による入力モードだとモデリングが難しいかもしれません。

そこで,パス図モードに切り替えると,Amosのようにパス図でモデリングすることもできます(ただし,Excel2007では利用できません)。

sem2

パス図モードでは,変数間にパスや共分散を引いて絵を描くことでモデリングします。

絵を描いた後,「モデルを反映」を押せば,自動的にパス図のモデルが上のモデル式のほうに反映されます。

パス図モードの状態で分析実行を押すと,結果もパス図で表示されます。

sem3

◆推定方法

推定方法は,最尤法と一般化最小二乗法が選べます。デフォルトは最尤法ですが,最尤法の場合,たまに解が求まらない場合があります。その時は最小二乗法を利用すると解が求まることがあります。

HADでは共分散構造だけではなく,平均構造も推定できます。切片や因子の平均などを推定する場合は,「平均構造を推定」をチェックしてください。

◆モデルの制約

HADでは,Amosのようにパラメータの等値制約や母数の固定が可能です。また,Amosではできないような「分散を非負にする」,「パラメータの総和を特定の値にする」といった複雑な制約も可能です。

等値制約は,「p:」のコロンのあとに,同じ記号を入力します。同じ記号のパラメータはすべて同じ推定値になります。また,コロンの後に定数を入力すると,固定母数となります。

それを応用して,間接効果の検定やパスの差の検定も簡単にできます。

sem4

上の図のように,パラメータに名前を付けてやって,「IND=a*b」と書いてやれば,間接効果を推定(ソベルテスト)することができます。これで媒介分析も簡単にできます。また,「DIF=a-b」と書けば,二つのパスの差を検定できます。

◆多母集団同時分析

HADでは,多母集団同時分析も実行できます。「グループ→」とのところに群分けする変数を指定するだけで,多母集団分析になります。同時に検討できるグループ数は15が限度です。

グループ間での等値制約なども同じ要領でできます。グループごとに違う制約を課したい場合(たとえば,グループ1は0,グループ2は0.5にしたい場合),「p:0;0.5」というように,セミコロンを使います。

◆出力

HADは結果をシンプルにするために,よく使われる適合度指標に絞って出力します。出力する適合度指標は,χ2乗値,CFI,RMSEA,SRMR,AIC,BIC,CAICです。GFIは平均構造を推定するときには計算できないので,出力しません。

推定値の出力は以下のようになります。

sem7

HADでは修正指数は表記しませんが,標準化残差を出力できるので,それを参考にしてパス図を修正してください。

◆確認的因子分析

HADでは,確認的因子分析がスムーズにできるように,確認的因子分析用の入力フォームもあります。

sem5

上のように,因子に付加する項目に「p:」と入力するだけです。確認的因子分析の場合,因子の分散が1に自動的に固定母数となります。また,デフォルトで因子間の共分散が仮定されています。

結果の出力は,HADの因子分析の結果と同じようなものになっています。

sem6

各因子のα係数とω係数が計算されます。

◆その他

SEMも,ほかの分析と同様に,分析履歴からモデルや分析結果を再現することができます。ただし,パス図は再現できません。

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